【社伝記】社伝記解読(5),(6)

社伝記解読(5)

尊いと愛で給いて、三夜御座(おはし)ませり。

別れに臨みて歌いて詔り給はく、
「二夜三夜、二人寝しかも、飽かずかも。 美し乙女愛(あ)しけやし。 居立ち 廻(もとほ)り、愛(は)しけやし 乙女。」

押姫答(いらえ)歌奉りて、
「愛しけやし、我が 大君の御手に捲く、珠持つ日根子忘られず、珠持つ日根子忘れられず、吾夫(あせ)を 占(し)め延(は)む、吾夫(あせ)を占(し)め延(は)む。」

御食津彦人々共に日本武尊を 送り奉れり。

日本武尊御安楽居(みやすらい)し時に、小石(ささかなるいし)と詔(の)り奉(たま)いて御手掛け給ひし故に、『御手掛け石』 と名付く。


日本武尊は、押姫と三夜過ごした。
そして、別れのときに歌った。

「二夜三夜、二人寝しかも、飽かずかも。 美し乙女愛(あ)しけやし。 居立ち 廻(もとほ)り、愛(は)しけやし 乙女。」

それに押姫が答(いらえ)歌を送って、
「愛しけやし、我が 大君の御手に捲く、珠持つ日根子忘られず、珠持つ日根子忘れられず、吾夫(あせ)を 占(し)め延(は)む、吾夫(あせ)を占(し)め延(は)む。」

この日根子という表現に、大きな意味がある。 (・・・・この項、別記予定)


社伝記解読(6)


また大御酒奉りし時、御盃を置き給ひし故に『平瓮(ひらか)石』とも申す。

御渡りの神は建御名方ノ神なり。
御国の巡りの時奇(くしび)の杉なりと詔らせ給ひて愛で給ひし故に、国の人の斎奉(いつきまつ)れるなり。
天つ御許(みもと)の神なるゆえに、国人(くにひと)の斎祀れるなり。


ここでは、建御名方ノ神 について書かれている。

私は素直に、
『建御名方ノ神は、天つ御許(みもと)の神なるゆえに、』
と読むが、なぜか
『天降(あも)りますとの神の称えに』
とも読まれている。

思うに、落合一平(直澄)が解読した後、誰かが意図して違えて読んだのだろう。
考えられることはいくつもあるが、前者の読み方だと、建御名方ノ神は出雲系ではないかも知れない。
伊勢津彦ほかの、信濃国に関連する話を想起させるのである。 
(・・・・この項、別記予定)